迷走を続ける歴史魔法少女シリーズ。
10年早かった前回、今回は手堅く行こう歴史魔女。
みんな大好き巫女さんついに登場!
●巫女さんの制服・水干
巫女といえばある筋の男子にモテモテの職業の一つ。白衣に赤い袴でほうきを持って神社を掃除している大和撫子な女の子を皆想像することでしょう。しかし、そこは歴史魔法少女シリーズ。ただの巫女さんは描きません。歴史のおべんきょうのため、巫女の正装ともいえる水干姿をチョイス。あれっ…やっぱりただの巫女さんじゃないの?
●魔法少女ファッションチェック!
巫女さんの通常の姿が白衣と赤い袴ならば、こちらはさしずめ変身後の姿。赤と白のめでたい配色は失敗の少ない安定した構成です。
★水干
平安時代の男子の衣服の一つです。セーラー服と同じく、元々男の格好というものにまたしても萌えてしまうのか。袖の先に袖括の緒という紐が通っていて、袖をすぼめることができます。千早という服で代用することも。萌え的には水干ではなくただの白衣を求められている気がしないでもないです。
☆白拍子
今回描いた水干の派生に白拍子というものあるので紹介します。
服装事体を指すものではありません。平安時代から鎌倉時代にかけて、水干を含め太刀や蝙蝠(かわほり)という扇などを持つ舞の名前です。見た目はいくつかの写真や資料を見比べると、袴がやたら長いものだったり、豪華な飾りがあったりで普通の水干姿の平均値より派手な印象を受けました。女性が男役を演じることが多かったとか。男装というと少し寂しいので、変身と言い換えれば途端にワクワクするものに聴こえて来ることでしょう。※烏帽子と太刀は省略されることもありました。
★烏帽子
まっすぐ伸びた立烏帽子です。基本的に男性用ですが女性の巫女もかぶります。かぶっている姿を期待した人の方が少ない気がしてきますことよ。
★菊綴(きくとじ)
ほわほわの飾りのことです。縫い目を補強するものです。見た目がこれとよく似ているヤマブシタケは市販のキノコの中ではやや珍しく、見かけたらとりあえず買っておきたいです。だしっぽい濃いめのキノコ風味が癖になります。
★緋袴
巫女装束の特徴の一つ。白拍子だと長袴になります。ミニスカートに見える方の袴姿は妄想です。⇒ミニ巫女さんを見る
★厄払いの杖
ほうきでなくてごめんなさい。魔女っ子なのにほうきでなくてごめんなさい。
●巫女さんの袴はスカートか?
巫女さんの袴の好みについて、ファンの間でも意見が別れているらしい。外観は一見ほとんど見分けがつかないけれど、それはもうセーラー服かブレザーかぐらいの勢いで好みが違い、派閥ができる程だとか。
現在主流の巫女さんの袴は行灯袴というスカート状の袴です。江戸時代後期から一般化し海外の影響で採り入れられ、手軽で利便性に優れます。一方伝統的な袴はズボン状で襠のある襠有袴というものです。男物の袴は昔から基本的にズボン状で、行灯型は略式のものとされているようです。普通の襠有袴は股下30cm程度から又が割れますが、襠高袴といって馬乗り等に使うズボンとほとんど変わらないものも存在します。
ちなみに巫女さんの行灯袴はプリーツスカートのような優雅さが可愛らしく人気があり、襠有袴は伝統的な誠実さ、一途さやロマンを感じられるものです。
襠有袴は直立姿勢では見た目がほとんど行灯袴と変わりません。上の絵もどちらとも取れるのですが、厳密に区別すると行灯袴として描いています。下の絵は構造を意識して襠有袴として描いたものです。
現実社会ではブルマーがショートパンツに駆逐されて失われつつあり、スクール水着も襠のない“新型”がほとんどです。それでも時代に逆行し、あえて定番としてブルマーを描き、さも一般的であるかのように旧スクール水着を描いてしまう。目の前の重いリアルよりも、淡くなった思い出の中のリアルの方が心に訴えかけるものがあるのでしょう。
巫女さんを描いてと言われ、袴について選択権の一切をゆだねられた場合、行灯袴を採用しがちなのも、淡いイメージの中のリアルを顕現させたかったからかもしれません。
しばしば巫女さんの袴は行灯袴と襠有袴のどちらが正しいかが議論されますが、イラスト関係で厳密な時代考証のいらないものでは決着がつきにくく、論点がスカートとパンツの好みの違いに収まる場合も少なくないようです。
襠有袴を求める声をいただき、描き分けたものがこちら。
襠有の精神論と伝統的な美しさも心に留めておきましょう。クラシックなドロワーズの良さに目覚められたように、硬派で古風な襠有袴の良さが分かる日がくるかもしれません。
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